▽ 朝の散歩、通勤、車の車内、ランニング中に、いつもAudible/オーディブルで本を“耳で読んで”います。
ゆっくり紙の本を開く時間はなかなか取れないけれど、耳なら日々のすきま時間がそのまま読書の時間になります。
そんな「ながら読書」で私が出会った一冊を、ここで少しずつ紹介していきます。
『遠い太鼓』|村上春樹 (ナレーター:野間口 徹)
私は村上春樹さんの小説よりも、エッセイの方が何倍も好きなんです。
『村上ラヂオ / 辺境・近境 / 走ることについて語るときに僕の語ること』などなど、あげていけば意外にエッセイも書かれています。
村上さんのエッセイにある “生活の温度” の方が自分にはとてもしっくりくるというか、村上さんの文体が本当に毎回いいんですよ。
『遠い太鼓』はまさにその代表で、ギリシャやイタリアでの暮らし、旅、日常の観察が淡々と綴られているだけなのに、妙に引き込まれていく。
読んでいるうちに、まるで自分がその場にいるかのような錯覚に陥ります。
そして、これが30年以上前の作品なのに、古さをほとんど感じない。もうまったく古さを感じさせないの文体が羨ましいというか、もう嫉妬です。笑
特に印象的なのは、“何もない日常を、ここまで面白い日記?物語?として描けるのか” ということ。
淡々としている日常なのに、こんなにもその場面がありあり浮かぶんです。
これを読んで感じたのは、村上春樹さんって良い意味で “飾り立てのない自然体な人”なんですよ。
ギリシャの海の色や料理、イタリアの乾いた空気とワイン。知らない土地なのに、なぜか何度も行ったことがあるような錯覚になる。
そして、この本では意外と奥さんがよく出てくるのもまたいいんですよ。
クールで、ちょっと辛口で、でもどこか優しい存在。
村上春樹本人が奥さんの前では少し弱くなる感じもあって、これがまた微笑ましくていい。
さらに、当時の村上さんが、この “放浪と執筆の3年間” の中で『ノルウェイの森』と『ダンス・ダンス・ダンス』を書いていています。
ぜひ遠い太鼓に触れてから、ノルウェイの森などを読んで欲しい。きっと違う視点で物語を感じるはずです。
私はこの本は読むと言うよりかは、耳で流しながら聴くのをオススメしています。
なぜなら本だと意外に分厚いから、ちょっとひるむかもしれません。笑
だから気軽に耳で聞けるAudible/オーディブルがちょうどいいんですよ。作業中でも移動中でも耳から頭に入ってくるのがありがたい。
あと、これは完全に好みもあると思うんですけど、
『遠い太鼓』のナレーター・野間口徹さんの声がまたいいんですよね。
スッ…と気持ちよく入ってくるあの感じ、めちゃくちゃ心地いいです。
「自分もどこか遠くへ行きたくなる」
そんな気持ちになるはずです。



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